わかりやすい経営コラム ~経営者の皆さまへ~
 

 part2「経営戦略ってなんだろう?②」

 いま、ある町に2店の小さなパン屋さんがあるとします。田中パン店と鈴木パン店です。この町に、パン屋さんはこの2店しかありません。

 店主の田中さんと鈴木さんは、首都圏にある同じパン屋さんで修業しました。そのため、田中パン店と鈴木パン店で売っているパンの品揃えは、まるっきり同じです。おたがいに、よりおいしいパンをつくって相手よりたくさん売ろうと努力していますが、パンをつくるための原材料も同じところから仕入れていて、つくりかたも同じなので味はかわりません。また、価格も同じです。とてもおいしいのですが、普通のパンです。

 つまりここで仮定したいのは、この2店が同じモノを同じ価格で売っているということです。立地など、そのほかの条件も同じであると仮定します。では、この町ではどちらのパン屋さんが繁盛しているでしょうか?

 田中パン店と鈴木パン店は、おそらく同じような売上になっているでしょう。

 こんどは、この町にあらたなパン屋さんが続々と出店して、小さなパン屋さんが10店になりました。みな、首都圏にある同じパン屋さんで修業してきました。さきほどのように、10店が同じモノを同じ価格で売っています。

さらに、大手パン屋さんチェーンがこの町に進出してきました。品揃えはだいたい同じですが、とても安い価格で販売しています。田中パン店と鈴木パン店の売上は、この町にパン屋さんが2店しかなかったときと比較してどうなるでしょうか。

 もちろん、売上は減少してしまいますよね。

 まるっきり同じモノを同じ価格で売っているという仮定は、あまり現実的ではありません。しかし、このケースではお客さんにとっての価値が「パン」だけであれば、どこで買っても同じ価値しかありませんので、パン屋さんが増えれば増えるほど、パン屋さんの競争は激しくなります。

 競争が激しくて減少した売上の回復をめざす田中さんは、お店にテーブルとイスを用意しました。その場でパンが食べられるスペースを設置して、飲み物の販売もはじめたのです。鈴木さんは、お店から離れた場所に住むお客さんや外出が困難なお年寄りのために、宅配サービスをはじめました。

 田中さんと鈴木さんの「作戦」がうまくいくかどうかはわかりませんが、田中パン店にはその場で飲食などができる空間が、鈴木パン店にはお店に行かなくてもパンが買える利便性がつくられました。これは、いまのところほかのパン屋さんにはない価値です。

ここで、「経営戦略」を、利益がうみだせるように「他社と異なる方法で、他社と異なる価値をつくるための作戦」だと考えてみたいと思います。

小さなパン屋さんの、「ほかの小さなパン屋さんや大手パン屋さんチェーンとは異なる方法で、異なる価値をつくるための作戦」が「経営戦略」です。



提携中小企業診断士 岩田 岳 

 





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