すこしまえのお話ですが、新聞で日本のドーナツ専門店の記事を読みました。ドーナツ専門店で販売しているモノは、主にドーナツです。
競合は、ほかのドーナツ専門店だけではありませんでした。コンビニエンスストアが新規参入します。ドーナツの取扱いをはじめて、有名なドーナツ専門店より安い価格で販売するのです。
そこで、有名なドーナツ専門店は「独特な食感」の新商品を発売することや、自社が提供するドーナツが「あげたて」であることをアピールします。これは、「ドーナツ専門店は『コンビニエンスストアと異なる方法』で『コンビニエンスストアと異なる価値』を提供しているのだ!」ということを、お客さんに認識してもらおうとしているのではないかと考えられそうです。
お客さんが、「ドーナツ専門店と『同じ』おいしいドーナツを、わざわざドーナツ専門店にいかなくても、家のすぐ近くにあるコンビニエンスストアでさらに安い価格で買うことができる」と認識したとします。
これでは、コンビニエンスストアにお客さんをたくさん奪われてしまいそうですね。
有名なドーナツ専門店には、コンビニエンスストアと価格競争をするという選択肢も考えられます。しかし、全国にお店がたくさんあるコンビニエンスストアと価格競争をするとなると、どうやら勝てそうもありません。
ドーナツ専門店のドーナツとコンビニエンスストアのドーナツが「同じモノ」だと認めてしまうと、価格競争になってしまいます。価格競争をして安い価格で利益がでるようにするためには、たくさんのドーナツを売らなければなりません。
ここは、価格競争をするのであれば「コンビニエンスストアと異なる方法」で費用をおさえたり、価格競争を回避するのであれば「コンビニエンスストアと異なる価値」をつくりだして付加価値を高めたりする必要がありそうです。
とくに中小企業は、価格競争になると一般的に大手企業にはかないません。みなさんがお勤めの会社や、ご自身で経営されている会社(事務所、お店など)が中小企業であれば、価格競争はさけたいところですよね。
このように、自社が提供している商品やサービスが、競合とは「どのように異なる価値をもっているのか」、「どのような異なる価値をつくることができるのか」を考えることが必要な場面もあるかもしれません。
「経営戦略」がうまくいけば、このコンビニエンスストアの市場参入は、ドーナツ専門店にとってもメリットがありそうです。ドーナツがより身近な存在になり、ドーナツの需要が増えるかもしれませんね。
「経営戦略」は経営の成功を保証するものではありません。企業にとっては成功をめざすための「作戦」であると同時に、ステークホルダー(従業員やお客さん、株主などの利害関係者)にとっての意思決定や行動の指針となるべきものであると考えています。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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