Aさん「Bさんの会社は大企業だから、利益がたくさんでていてよいですね。わたしのところは零細企業だから、お金がなくて大変ですよ」
Bさん「いえいえ、Aさんの会社は毎年売上が伸びていてうらやましいと思っています。御社が零細企業だなんてとんでもない!」
今回は、大企業や中小企業、零細企業などという言葉の分類について考えてみたいと思います。これらは、一般的によくつかわれている言葉ではないかと思います。
さて、AさんとBさんは「大企業」や「零細企業」について、なにを基準に考えているのでしょうか。
Aさんがいうように、利益がたくさんでていると「大企業」なのでしょうか。また、お金がないと「零細企業」なのでしょうか(「大企業」であれば利益がたくさんでるのでしょうか。「零細企業」にはお金がないのでしょうか)。Bさんがいうように、毎年売上が伸びている会社は「零細企業」ではないのでしょうか(「零細企業」では毎年売上が伸びないのでしょうか)。
ある日、みなさんは学生時代のお友達と久しぶりに再会すると、お友達から質問がありました。「あなたの会社(事務所、お店など)は、中小企業ですか?それとも大企業ですか?」このような質問に対して、みなさんはどのようにお答えになるでしょうか。
このような言葉による企業の分類は、その定義や範囲が法律で規定されている場合があります。
会社法という法律には、「大会社」という言葉がでてきます(Wikipedia「大会社」)。会社法では、「大会社」を「資本金5億円以上」または「負債総額200億円以上」の会社だと定義しています。聞きなれない言葉かもしれませんね。
会社法では、「大会社」であるかどうかや株式に譲渡制限があるかどうかを基準に、その会社が設計できる機関(株主総会や取締役、取締役会などのことをいいます)の範囲などを定めています。
法人税法では、「中小企業者」を「資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人」としています。「中小企業者」であるかどうかなどを基準に、税金の優遇を受けられる企業や優遇の範囲を定めています。
このように、それぞれの法律において企業を分類することで、会社の機関設計や税制優遇の範囲などの適用ルールを明確にするという目的があるようですね。いろいろな法律などで、その目的により、いろいろな名称や定義があるのはとてもわかりにくいですね。
さらに、中小企業基本法では、「中小企業者」の範囲や「小規模企業者」を以下のように規定しています。
業種
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中小企業者(下記のいずれか)
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小規模企業者
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資本金
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従業員数
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従業員数
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製造業
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3億円以下
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300人以下
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20人以下
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卸売業
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1億円以下
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100人以下
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5人以下
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小売業
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5,000万円以下
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50人以下
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サービス業
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5,000万円以下
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100人以下
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この規定では、「中小企業者」や「小規模企業者」に対する補助金など、主に施策における支援の対象範囲を定めています。また、「2016年版中小企業白書(中小企業庁)」によると、企業数の99.7%が「中小企業者」に該当します。このように、統計資料として活用するためには、その言葉の定義を明確にする必要がありそうですよね。
では、さきほどの「大企業」と「零細企業」はどうでしょうか。これらの言葉は、一般的に「法律用語ではないのだ!」と捉えられています(「大企業」については、一部法律などで規定されている場合があります)。
「大企業」は、中小企業基本法の「中小企業者」以外の企業として、「零細企業」は、中小企業基本法の「小規模企業者」として表現されることが多いようです。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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