経営資源にはかぎりがあります。かぎられた経営資源を効率よく配分するには、そのための意思決定が必要です。「意思決定」とは、「目標などを達成するために、複数の代替案のなかからよさそうな案を選択すること」でした。「なにかを『選択』する」ということは、「なにかを『選択』しない」ということでもあるのです。
みなさんは、なにかを「選択」した経験がたくさんあるはずです。最近は、どのような「選択」をしたでしょうか。なにかを「選択」するということは、「複数の代替案のなかからよさそうな案を選択」しなければならない状況であると考えられます。たとえば2つの選択肢があって、どちらかを選ぶ必要があるとすれば、通常この2つを同時に選ぶことはできない状況ではないかと思います。
わたしは、高校受験で「R高校」と「I高校」に合格しました。どちらに進学するかを選ぶ必要があります。「2つを同時に選ぶことはできない状況」ですよね。そして、わたしは「I高校」を「選択」しました。これは、「『I高校』に進学する」という「選択」であり、「『R高校』に進学しない」という「選択」でもあります。
「R高校」を卒業すると、一般の入学試験を受験しないで「R大学」に進学することができます。「I高校」に、そのような大学はありません。わたしにとって「『I高校』に進学する」というこの「選択」は、「一般の入学試験で大学を受験する」という「選択」であり、高校卒業後は「『R大学』に進学しない」という「選択」でもありました。
おなかがすいているときに、なにを食べるか迷うことがあります。たとえば、お昼ごはんです。「てんぷらそば」も食べたいし「カレーライス」も食べたいのです。なにかを「選択」するときには、いろいろな制約があります。人によって差がありますが、そんなにたくさん食べることはできません。また、予算がかぎられているかもしれません。
「てんぷらそば」を「選択」したとしましょう。これは、この日のお昼ごはんに「『てんぷらそば』を食べる」という「選択」であり、「『カレーライス』を食べない」という「選択」でもあります。お昼ごはんの「てんぷらそば」と「カレーライス」であれば、かんたんに選ぶことができるかもしれませんね。
受験生は、志望校に合格するためにたくさん勉強をしています。お友達ともあそびたいのですが、勉強をしている時間はあそぶことができませんし、あそんでいる時間は勉強をすることができません。このように、「なにかを『選択』すると、ほかのなにかが犠牲になってしまう状況」を「トレードオフ」といいます(Wikipedia「トレードオフ」)。
時間やお金がもっとたくさんあればよいのですが、これらにはかぎりがあります。日常生活のなかでも、いろいろな制約があるために、なにかを「選択」しなければならない場面が多くあります。みなさんは、さまざまな「選択」をしながら生活しているのです。
ある学生さんが、サークルのイベントで2泊3日の旅行に参加しました。この旅行の参加費用は50,000円でした。学生さんはアルバイトをしています。旅行の期間は、アルバイトをおやすみすることにしたのです。この学生さんのアルバイト代は、1日10,000円です。
旅行の参加費用は50,000円です。しかし、経済学では「2泊3日の旅行に参加したことで得ることができなくなったアルバイト代」も費用になります。この費用を「機会費用」といいます(Wikipedia「機会費用」)。経済学では、この旅行の費用を「50,000円+10,000円×3日=80,000円」だと考えます。
とくに中小企業では、相対的に経営資源が不足している場合が多いようです。かぎられた経営資源を活用するためには、さまざまな意思決定が必要です。
「経営戦略」や「ドメイン」には、その企業のステークホルダー(従業員やお客さん、株主などの利害関係者)にとっての意思決定や行動の指針になるという役割がありました。そして今回のお話では、「なにかを『選択』する」ということは、「なにかを『選択』しない」ということでもありました。
たとえば、「ドメインの決定」では、「だれがターゲットであるのか」ということを特定するとともに、「だれがターゲットではないのか」ということを明確にすることが重要でしたね。みなさんの会社(事務所、お店など)の「経営戦略」や「ドメイン」では、必要な意思決定をすると同時に「なにをして、なにをしないのか」ということを明確にすることにも大きな意味がありそうです。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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