わかりやすい経営コラム ~経営者の皆さまへ~
 

 part33「意思伝達(つたえること)」

 「経営戦略」や「ドメイン」には、その企業のステークホルダー(従業員やお客さん、株主などの利害関係者)にとっての意思決定や行動の指針になるという役割がありました。そして前回のお話では、「なにかを『選択』する」ということは、「なにかを『選択』しない」ということでもありました。

 たとえば、「ドメインの決定」では、「だれがターゲットであるのか」ということを特定するとともに、「だれがターゲットではないのか」ということを明確にすることが重要でしたね。このように、「意思決定や行動の指針になる」ためには、「意思決定する人」や「行動する人」がそのドメインを理解する必要がありそうです(「ドメイン・コンセンサス」)。

 part16part17の「言葉の定義づけ」では、コミュニケーションなどでつかわれる言葉の定義を明確にして、その言葉について相手と共通の解釈をすることが大切だというお話がありました。日常的なコミュニケーションにおいても、相手に理解してもらうためには、つたえたいことをわかりやすく説明することが重要ですよね。

 部長「部下のAくんは、わたしの説明とは異なる行動ばかりしているな…」

 部長「部下のBくんは、なんど注意してもムダなことばかりに時間をつかっているようだな…」

 このようなお話をよく聞くことがあります。もちろん、コミュニケーションにおける従業員のみなさんの理解する能力にも差がありそうです。しかし、部下のみなさんはこのように感じているかもしれません。

 Aさん「部長は、いつもなにをいっているのかわからないな…」

 Bさん「もっとかんたんに、みじかく説明してくれればよいのに…」

 Cさん「そうそう、口頭でながい時間、しかも抽象的なお話ばかりだし…」

 いかがでしょうか。このような状況では、部下のみなさんは、部長が組織として適切だと考えているような行動はできそうもありません。コミュニケーションにおいて部下のみなさんが理解する能力よりも、部長の意思伝達の方法に問題があるのかもしれません。

 日常的なコミュニケーションと同じように、経営においても意思伝達はとても大切です。「経営戦略」や「ドメイン」では、「なにをして、なにをしないのか」ということを明確にすることが重要な場面があります。もちろん、この場面ではその企業のステークホルダー(従業員やお客さん、株主などの利害関係者)がこの会社は「なにをして、なにをしないのか」ということを理解する必要がありますよね。

 ある山の頂上をめざしているときに、「Aコース」と「Bコース」という2つの道がありました。「Aコースに行く」という選択をしたとしましょう。いま、「Aコースに行く」というこの選択は、「Bコースには行かない」という選択でもあります。経営者は、その企業のステークホルダー(従業員やお客さん、株主などの利害関係者)に対して、「Aコースに行く」という選択を、明確にわかりやすくつたえなければなりません。

 「経営戦略」や「ドメイン」は、企業の選択を明確にわかりやすくつたえるための手段にもなりそうです。「Aコースに行く」のか「Bコースに行く」のかがわからなければ、意思決定や行動の指針にはなりません。

 組織では、役職などに応じて、従業員にはさまざまな役割が期待されているのではないでしょうか。さきほどの部長にも役割がありそうです。「部署の目標を明確にする」「目標を達成するための手段を示す」「部下が行動できるように導く」など、いろいろと考えることができますね。そのために、適切な意思伝達は欠かせません。

 みなさんの会社(事務所、お店など)には、いろいろな目標があるのではないでしょうか。

 「売上を重視して、シェアを拡大するのだ!」

 「利益を重視して、収益性を改善するのだ!」

 このように、かんたんなもので考えてみましょう。この2つの選択肢でも、どちらを選ぶかによって、従業員の営業活動やお客さんの購買行動に違いがでてきそうです。このような選択が、組織にかかわるみなさんにつたわっているでしょうか。理解されているでしょうか。

提携中小企業診断士 岩田 岳







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