わかりやすい経営コラム ~経営者の皆さまへ~
 

 part36「取材拒否!?①」

 ある町の小さなパン屋さん、田中パン店には、お店にテーブルとイスが用意されています。その場でパンが食べられるスペースを設置して、飲み物の販売もはじめたのです。主に販売しているモノは「おいしいパン」なのですが、スペースを利用するお客さんのために、いまではサンドイッチなどのパンのほかにもかんたんな食事を提供しています。

 なかでも、田中さんの得意なカレーライスは「とてもおいしい!」と評判です。田中パン店のカレーライスは、この町でウワサが広まって、だんだんと有名になりました。最近は、ウワサを聞いてとなりの町から田中さんのカレーライスを食べにくるお客さんもいます。

 カレーライスの売上効果もあり、お店は繁盛しているようです。とくに、田中パン店で定期的に開催している俳句の発表会などのイベントがある日には、たくさんのお客さんでにぎわっています。田中さんの奥さんは、お店が忙しいせいか、つづけているダイエットも順調でとてもよろこんでいます。

 ある日、田中さんは、はじめてこのお店のカレーライスを食べたというお客さんとお話をしていました。そのお客さんはマスコミ業界でお仕事をしている人だそうです。そしてお客さんは、「田中パン店のおいしいカレーライスをテレビ番組で紹介させてください!」といいました。

 そのテレビ番組は日本全国で放送されます。有名なお笑い芸人さんが、いろいろなお店の料理を紹介するテレビ番組で、おいしい料理がだいすきなわかい人を中心にとても人気がある番組だそうです。そして、テレビ番組の放送後には、たくさんのお客さんがカレーライスを食べにきてくれることでしょう。

 田中さんからお話を聞いた田中さんの奥さんは、ワクワクしながらテレビ番組に出演するための洋服選びに夢中です。ダイエットが順調な田中さんの奥さんは、なるべくやせてきれいにみえる洋服で出演しようと考えながら、テレビ番組に出演することを楽しみにしていました。

 しかし数日後、田中さんはこのお話をことわってしまいました。テレビ番組に出演することを楽しみにしていた田中さんの奥さんは、なんだかすこしガッカリしているようです。でも、なぜ田中さんはこのお話をことわってしまったのでしょうか。田中パン店にとってこのテレビ番組への出演は、あらたなお客さんを獲得するチャンスだとも考えられそうですが…。

 田中さんは、いつもお店にきてくれるお客さんのことが気になっていました。そういえば「part10」で田中さんは、田中パン店の「顧客(標的顧客:だれに)」と「機能(顧客機能:なにを)」について、つぎのように考えていました(part10「ドメインの決定(なにを?)」)。

 「だれに」:この町に住むお年寄りに
 「なにを」:たのしくお話やお食事ができる場所を

 では、現在の田中パン店のドメインを考えてみましょう。田中パン店では、お店の「技術(独自技術:どのように)」や「資源(経営資源:どのように)」を活用して、「この町に住むお年寄りに」「たのしくお話やお食事ができる場所を」提供しています。

 わかい人を中心にとても人気があるテレビ番組が日本全国で放送されると、わかい人を中心にたくさんのお客さんがカレーライスを食べにきてくれることでしょう。しかし、あらたにきてくれるお客さんは、田中パン店の「顧客(標的顧客)」とは異なりそうです。

 田中パン店が提供している「物理的価値(モノ)」は、「おいしいパン」や「おいしいカレーライス」です。そして、田中パン店が提供している「機能的価値(コト)」は、「たのしくお話やお食事ができる場所」です。田中さんは、いつもお店にきてくれるお客さんのことが気になっていました。さて、田中さんはどうしてお客さんのことが気になっていたのでしょうか。どのようなことが気になっていたのでしょうか。

提携中小企業診断士 岩田 岳 






連載中(月2回更新)




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