ここまで、ある町の小さなパン屋さん、田中パン店と鈴木パン店に協力してもらいながら、経営に関するいろいろなお話をしてきました。そこで、もういちどお話の主役である「経営戦略」についてまとめながら、あらためておさらいしてみようと思います。
みなさんは、「経営戦略」という言葉について、なんとなくイメージできるようになったのではないでしょうか。では、質問です。「あなたの会社(事務所、お店など)の経営戦略は、なんですか?」
「経営戦略」は、「利益がうみだせるようにする『作戦』」という言葉におきかえました。そして、その「作戦」は、「他社と異なる方法で、他社と異なる価値をつくるための作戦」だと考えることにしました。さて、みなさんはおもしろそうな「作戦」が思いついたでしょうか。
「他社と同じ方法」で「他社と同じ価値」を提供していると、価格競争になってしまいましたね。とくに、相対的に経営資源が不足している場合が多い中小企業では、競合である大手企業と「同じモノ」を「同じ方法」で「同じ価格」で売っている場合、利益をうみだすことが難しくなってしまいます。
「ドメインの決定」では、つぎの3つの要素のお話をしました。
「顧客(標的顧客)」customer:who⇒「だれに」
「機能(顧客機能)」function:what⇒「なにを」
「技術(独自技術)」technology(「資源(経営資源)」resource):how⇒「どのように」
そして、外部環境と内部環境に着目して、つぎのアプローチから経営戦略を考えました。
★「ポジショニングアプローチ(positioning
approach)」
★「資源アプローチ(resource based
view)」
田中パン店は、この町に進出してきた大手パン屋さんチェーンとくらべて「ヒト、モノ、カネ、情報、ノウハウ」などの経営資源が不足しています。「大手パン屋さんチェーンと同じ方法」で「大手パン屋さんチェーンと同じ価値」を提供して競争しようとしても、とてもかないそうにありません。利益をうみだすことが難しくなってしまいます。
そこで、田中パン店の店主である田中さんは、「大手パン屋さんチェーンと異なる方法」による「大手パン屋さんチェーンと異なる価値」の提供を考えます。田中パン店では、「この町に住むお年寄り」という「顧客(だれに)」に、「たのしくお話やお食事ができる場所」という「機能(なにを)」を提供します。
田中パン店はパン屋さんなのですが、田中パン店の「技術(どのように)」や「資源(どのように)」である田中さんの料理の腕前を活用して、得意なカレーライスもメニューに加えて評判となりました。定期的に開催している俳句の発表会などのイベントも好評のようです。
もちろん、「大手パン屋さんチェーンと異なる方法」で「大手パン屋さんチェーンと異なる価値」を提供しているからといって利益がうみだせるとはかぎりません。「技術(どのように)」や「資源(どのように)」を活用することで、「顧客(だれに)」であるお客さんにとって価値のある「機能(なにを)」をつくりだすことが重要ですよね。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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